共同研究

<< 共同研究

オーソライズドジェネリック(AG)がジェネリック普及に与えている影響の効果検証


[慶應義塾大学]
中嶋 亮 研究室

共同研究の背景

当社では、医療ビッグデータ事業において、保険者のジェネリック医薬品普及に対する医療データ分析および加入者の行動改善に関するご提案を実施しております。厚生労働省では「2023年度末までに全ての都道府県でジェネリック医薬品の使用割合80%以上」を目標と掲げていますが、現在もなお80%に届いていない保険者のお悩みの声をいただいております。

この状態に有効な施策を検討するべく、当社は慶應義塾大学 経済学部 中嶋 亮 教授協力のもと、病院および調剤薬局の診療報酬データからオーソライズドジェネリック(AG:先発医薬品メーカーが開発したジェネリック医薬品)が、ジェネリック医薬品普及に与える影響に関する共同研究を開始いたしました。

写真:(左から)筧悠夫さん[中嶋研究室]、中嶋亮教授、市原社員[JASTLab]

研究の詳細

本研究では、レセプトデータ(病院等で診断がなされた内容や施された処置等の情報が含まれる)を利用して、患者に処方された医薬品データを分析し、AGと先発医薬品の使用率の関係を調査しております。その結果からジェネリック医薬品の使用割合を増加させるための施策を仮説検証し、各種保健事業への導入やジェネリック医薬品普及に関する新規商材開発の検討を進めております。

当社のレセプトデータから一部の医薬品に対してAGとジェネリック医薬品の普及率を分析したところ、AGがジェネリック医薬品普及を促進する結果が得られました。
この結果よりAGの普及がジェネリック医薬品の普及に対して効果的である可能性が示唆されました(図1参照)。

図1:各都道府県におけるAGの普及率(横)とジェネリック医薬品の普及率(縦)

一方で、AGではないその他のジェネリック医薬品(ここではOG:Other Genericとする)の普及もジェネリック医薬品全体の普及において無視はできないものとなっております。そこで、よりAG普及の効果を実証するため、医薬品や薬局ごとにAGとOGがジェネリック医薬品普及に与える影響について分析しました。
分析の結果、一部の医薬品において薬局ごとにAGとOGがもたらすジェネリック医薬品普及効果には差が生じており、OGは処方しているがジェネリック医薬品普及率が低い薬局ほど、AGにおけるジェネリック医薬品普及効果が高いことを定量的に明らかにしました(図2参照)。

図2では、OGの処方によりジェネリック医薬品普及率が高い薬局(黄破線)とジェネリック医薬品普及率が低い薬局(赤破線)について、AGを採用することがジェネリック医薬品普及率に与える影響を表しています。

図2:AG採用の有無(横軸)とジェネリック医薬品の普及率(縦軸)における薬局ごとの関係

以上の研究成果より、一部の医薬品に対して「AGがジェネリック医薬品普及率を有意に上昇させること」、および「薬局ごとにAG・OGがジェネリック医薬品普及率に与える影響の異質性があること」が明らかになりました。
今後はさらに多くの医薬品に対して、上記2点との関連性を分析してまいります。また、AG・OGの導入に関わるコスト面の要因について追究し、各種保健事業に対する有効なご提案を検討してまいります。

※研究成果は随時更新予定です。

関連外部リンク


中嶋 亮 -Ryo Nakajima-

慶應義塾大学 経済学部 教授

1994年 京都大学農学部農林経済学科卒業
2004年 ニューヨーク大学経済学部博士課程修了(Ph.D. in Economics)
応用計量経済学を専門としており、2018年に日本経済学会石川賞を受賞。
社会的相互作用の実証分析を研究テーマとして、人々が市場を超えたチャンネルで互いに影響しあうメカニズムと、その相互作用から発生する外部経済性についてデータでの検証を行ってきた。

>> 研究者ホームページ

▼ Webでのご説明も可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。