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【2016年の再来か】大人も注意すべきマイコプラズマ感染症の実態

昨今マイコプラズマ感染症が増加傾向をみせています。現在様々な要因で国内の薬剤不足という状況に陥っている背景等もあり、子供を中心に流行する病気だからと大人が油断するのは危険です。

当社では、独自に保有するレセプトデータを中心としたメディカルビッグデータ「REZULT」を活用し、マイコプラズマ感染症について独自調査を実施しました。また、オープンデータも組み合わせて現状の可視化を行いました。

【集計条件】
調査対象:JASTの保有するレセプトデータ(約900万人 2024年8月時点)の内、2016年1月~2023年12月診療、傷病名称に「マイコプラズマ」を含むもの、疑い病名を除く

< 目次 >
1.「マイコプラズマ感染症」の患者数推移
2.最も流行した年(2016年)における状況とは
3.2016年 対 2023年 年代対比
4.抗生剤の供給について

1.「マイコプラズマ感染症」の患者数推移

一般的に、日本におけるマイコプラズマ感染症は3~7年ごとに流行し、その流行は1~2年程度続くとされています。前回の流行のピークは2016年に記録されました。そこで、2016年を始点として、2023年までのマイコプラズマ感染症における年別患者数の推移を追跡しました。

マイコプラズマ感染症は、ピークを迎えた2016年以降、患者数が減少傾向にありました。特にコロナ禍では手洗い・うがいやマスク着用の浸透が影響し、その傾向が顕著でした。その後2022年までは減少が続きましたが、2023年には再び増加傾向に転じています。

2024年の最新動向については、東京都が公開している定点医療機関当たりの患者報告数(※マイコプラズマ肺炎に限る)を用いて確認していきます。

東京都が公開しているマイコプラズマ肺炎の感染者データを確認したところ、2024年5月頃から急激に報告数が増加しています。オープンデータからも、2016年以来のマイコプラズマ感染症の流行が確認できます。

2.最も流行した年(2016年)における状況とは

では、流行した2016年当時の状況はどうだったのでしょうか。REZULTを用いて追跡してみました。

最も流行した年となった2016年とその後の2年間の患者数の推移を見てみると、いずれも10月以降に患者数が増え始めることが確認できます。冬場に向けて増加する傾向があるため、今回の流行についても10月以降にさらに患者数が増える可能性が高いと考えられます。

3.2016年 対 2023年 年代対比

本レポートの冒頭でも触れましたが、マイコプラズマ感染症は子供を中心に流行すると報告されています。そこで、最も流行した2016年と2023年のマイコプラズマ感染症患者の年代別構成比を比較した結果がこちらです。

年代別の患者数構成比を見ると、10代以下の患者数が非常に多いことがわかります。しかし、2023年度のデータでは、10代以下の構成比が2016年に比べて約20%減少しています。これは、20代以上の患者が流行時でなくても一定数存在していることを表しており、子供だけの病気と考えて大人が無視して良いものではないことを示唆しています。さらに、大人が発症しない場合でも、大人から子供への感染リスクは依然として存在するため、世代を問わず予防が必要です。

4.抗生剤の供給について

マイコプラズマ感染症の治療には、クラリスロマイシンやアジスロマイシン(ジスロマック)などのマクロライド系抗菌薬が必要です。しかし、2020年12月に発覚したジェネリック(後発医薬品)メーカーの品質不正問題の影響で、抗生剤の供給が一時的に不足していました。

なぜ 長引く“薬不足” 解消しない供給不安の謎に迫るhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20240618/k10014483281000.html

一方で、現在の処方量は増加傾向にあり、徐々にではありますが供給が回復しつつあります。しかし、全体的な薬剤の供給不足は依然として解消されておらず、様々な要因により一部の抗生剤については調整供給が続いている状況です。

例:クラリスロマイシン錠200mg「日医工」限定出荷に関するお知らせhttps://www.nichiiko.co.jp/medicine/file/10730/information/20240806cI1.pdf

これらの供給問題および供給の回復については、下記のようにREZULTのデータを確認することでも同様の傾向を確認することができます。

このような状況を考慮すると、供給の不透明さが続く可能性があり、予防対策の重要性が一層増しています。

マイコプラズマ感染症は、保育施設、幼稚園、学校などの閉鎖施設内や家庭での感染伝播が見られるものの、短時間の曝露による感染拡大の可能性はそれほど高くなく、濃厚接触による感染が多いとされています。そのため、普段から流水と石けんによる手洗いやうがいを徹底することが大切です。また、感染した場合は、家族間でもタオルなどの共用を避けましょう。咳の症状がある場合は、マスクを着用するなど“咳エチケット”を守ることを心がけましょう。

今後とも当社のメディカルビッグデータの分析を通じて、医療の発展に貢献できるような研究レポートを発信して参ります。レポートについて、気になる点、詳しく知りたい点などがございましたら、下記お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。また、データ利用についてのお問い合わせもお待ちしております。

当社のメディカルビッグデータ「REZULT」については >>こちら

【関連情報】(本レポートは下記情報を参考にして作成されています)
厚生労働省 マイコプラズマ肺炎
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/mycoplasma.html
なぜ 長引く“薬不足” 解消しない供給不安の謎に迫る
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240618/k10014483281000.html
クラリスロマイシン錠200mg「日医工」限定出荷に関するお知らせ
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/file/10730/information/20240806cI1.pdf
医薬品産業におけるCOVID-19パンデミックへの対応と今後
https://www.jpma.or.jp/opir/news/061/01.html

お問い合わせ – JAST Lab