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レポート

2024年10月施行 先発医薬品(長期収載品)の選定療養化に関する事前影響調査

当社は、独自に保有しているレセプトデータを中心としたメディカルビッグデータ『REZULT』を基に、先発医薬品(長期収載品)の選定療養化に関する事前影響調査を実施しました。

2024年10月より医療上特段の理由(医療上必要があると認められる場合及び後発医薬品を提供することが困難な場合)なく患者が後発医薬品ではなく、後発医薬品のある先発医薬品(以下「長期収載品」)を希望した場合に、長期収載品と後発医薬品の差額の4分の1を患者が負担する選定療養の仕組みが導入されることとなります。
当社では適正服薬に向けた通知や勧奨事業を手掛けており、今回は長期収載品の選定療養化についてレセプトデータを用いた調査を実施しました。

【集計条件】
調査対象:
当社の保有するレセプトデータ(約900万人 2024年7月時点)の内、2023年1月~2023年12月の1年間における医科外来・調剤レセプトデータを対象に調査。   
厚生労働省の公開する長期収載品の対象リストに掲載されている医薬品が選定療養となった場合の影響を調査した。
長期収載品に対応する後発医薬品は薬価基準収載医薬品コードの先頭9桁が一致するものとした。           
参考資料:
 厚生労働省 後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について (https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html)

      

 目次
 1 | 長期収載品の選定療養費化の内容
 2 | 長期収載品の処方患者傾向 
 3 | 選定療養化における医療費負担 
                                       

 1 | 長期収載品の選定療養費化の内容


長期収載品の選定療養化について下記に図示しました。(図1)
選定療養以降、長期収載品を患者判断で継続する場合、患者負担が増えることが分かります。

【図1】長期収載品の選定療養化

 2 | 長期収載品の処方患者傾向


長期収載品の処方状況について調査しました。

患者全体で見ると半数近く(46.1%)が何らかの長期収載品を処方されていることが確認できました。医薬品の使用量としても長期収載品が10.7%を占めていることが分かり、今回の制度変更について影響範囲が広いことが分かります。薬剤料としても長期収載品は7.6%となっており財政への影響も大きいことが推察されます。(図2)

また、投与経路別に確認したところ注射薬は割合が小さく、外用薬において長期収載品が多く使用されていることが分かりました。(図3)

年代別に見ると15歳未満での長期収載品の使用率が高くなっていることが確認できました。(図4)
この世代では後発医薬品の使用率も低い傾向にあることが分かっています。選定療養費は乳幼児医療・ひとり親家庭等医療・こども医療においても徴収対象となることから、施行後の影響が大きくなることが考えられます。

【図2】長期収載品の処方患者割合と長期収載品が医薬品全体に占める割合

【図3】長期収載品における投与経路別の割合

【図4】年代別の長期収載品処方状況

 3 | 選定療養化における医療費負担


医療費の負担について、全ての患者が長期収載品の継続を希望した場合を仮定し調査しました。

長期収載品を処方されている患者さんが長期収載品の継続を希望した場合、平均で一人当たり年間608円の負担増となる可能性があります。(図5)

医薬品毎に患者への影響が大きいと思われる薬剤を確認したところ、上位5剤を見ると年間10万円以上の負担増となる可能性があることが分かりました。選定療養費となる金額も大きく、患者が希望した場合でも長期収載品の継続が難しくなる可能性が示唆されます。(図6)

最後に医薬品毎に選定療養費の合計金額についてシェア率を確認しました。上位2剤がヒルドイド(ローション・ソフト軟膏)となり全体の18.5%を占めることが分かりました。長期収載品と後発医薬品で3倍程度の薬価差があり、処方量も非常に多いことから医療財政への影響が大きい医薬品となる可能性があります。(図7)

【図5】長期収載品における負担額の変化

※保険適用の患者負担は3割で計算
(計算結果には小数点以下が発生するため合計が合わない場合がある)

【図6】患者負担への影響が大きい医薬品 上位5剤

【図7】選定療養費のシェア率 上位5剤

ここまで長期収載品の選定療養化に焦点を当てて影響を分析してきました。
選定療養費は原則本人負担となることから助成金の対象とならず、患者への直接影響が考えられます。このため、後発医薬品の使用率への影響も含め、医療財政へ大きなインパクトのある制度変更となるのではないでしょうか。
2024年10月に選定療養化が施行された際、実際の影響について注視していきたいと考えています。

当社では、データヘルス計画の策定支援や事業実施支援の一環として、適正服薬(後発医薬品の利用促進等)に関して通知から効果分析までのサービスも行っています。他にも、約900万人分の匿名加工済みのレセプト・健診データ等の医療リアルワールドデータによる地域差分析やペイシェントジャーニー(※1)などアドホックな分析やデータの販売を行っております。気になる点、詳しく知りたい点などがございましたら、下記アドレスまでお気軽にお問い合わせください。

※1 患者が病気を認知し、医療機関へ受診、そして治療となるまでの一連のステップ。

■本件で利用したメディカルビッグデータ「REZULT」につきましては以下をご参照ください。
https://www.jastlab.jast.jp/rezult_data/

本件レポート内容に関するお問い合わせ先
 E-mail:rezult@jast.co.jp
 URL:https://www.rezult-lp.com/