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適応障害の患者動向について

当社(日本システム技術株式会社 以下、JAST)では、独自に保有している匿名化済の診療報酬明細書(以下、レセプト)データを中心とした医療関連データを基に、調査を行っています。

今回のレポートでは「適応障害(adjustment disorders)」をテーマに調査いたしました。

適応障害とは、何らかのストレスによって心身に不調を起こし、社会生活を継続することが困難な状態の病気です。入学や入社、異動、転勤などの環境変化にうまく対処できなかった時に発症するとされており、ゆううつな気分、不安感、頭痛、不眠などの様々な症状が出現します。
参考:e-ヘルスネット(厚生労働省)『健康用語辞典』「適応障害」

適応障害は、誰でもかかる可能性のある自然な病気ですが、症状が長引くと他の精神疾患につながる可能性もあると言われています。そこで本レポートでは適応障害について理解を深めるため、レセプトデータから患者数を抽出し、その傾向と特徴について調査結果をまとめました。

【集計条件】
調査対象:JASTの保有するレセプトデータ(約880万人 2023年9月時点)の内、2018年1月~2022年12月診療、ICD-10「F43 重度ストレスへの反応及び適応障害」のデータ

< 目次 >
1.年別患者数の推移
2.年代別患者数
3.月別患者数の推移

1.年別患者数の推移

2018-2022年の適応障害患者数を年別に算出しました。5年間で患者数は約1.7倍にまで増加していることが見られます。他傷病を含めた総患者数に対する割合も同様に増加していることから、特に適応障害の患者数が年々増加傾向にあることが分かります。現状では増加傾向の背景は明らかにされていませんが、日本における適応障害患者数の増加は「職場不適応が増加していることに一因がある」とも指摘されています。

参考:池田 朝彦「日本における「適応障害」患者数の増加」(『社会政策』12 (2), 101-112, 2020)

2.年代別患者数

次に年代別(9歳以下、10代、20代、30代、40代、50代)で患者数を算出したところ、20代が最も多い結果となりました。20代が多い理由としては、進学や就職などで環境の変化が激しい年代であることが考えられます。一方、30・40・50代にも一定の患者数が見られることから、適応障害は20代に限らずケアが必要であることが示唆されています。

3.月別患者数の推移

最後に月別の適応障害患者数の傾向を見ていきます。月別で見たところ、患者数および割合のいずれも冬季に増加する傾向であることが確認できます。一般的にうつ病や感情障害などの精神疾患は季節性がある場合もあり、冬季に影響を受けることが多いとされています。適応障害についても他の精神疾患と同様に季節性の影響が見受けられます。

今回はレセプトデータから患者数を抽出し、適応障害の患者の傾向と特徴を調査しました。その結果、適応障害の患者数は年々増加傾向にあり、年代別では20代をはじめ30代、40代、50代の順で多いことが分かりました。さらに月別で見ると、主に冬季に患者が増える傾向にあることが確認されました。ただし、一般的に季節要因と関係性があるとされているうつ病などの精神疾患と違い、適応障害と季節要因の関係性は定かではありません。むしろ適応障害は入学や就職、転職、結婚などの環境変化が起こるタイミングに多いと言われているため、月別の傾向はさらなる調査が必要です。

適応障害はうつ病と異なり、ストレスの原因を断つことで回復すると言われています。可能であればストレス源となる状況を避け、それが難しい場合は休息とリラックスを通じてストレスの軽減に臨みましょう。ただし、抑うつや不安感などが強くなり、家事ができない、学校や会社に行けないなど、通常の社会生活を送りにくい状態が数週間続く場合は、精神科、心療内科、メンタルクリニックなどを受診することをお勧めします。

今後とも当社のメディカルビッグデータの分析を通じて、医療の発展に貢献できるような研究レポートを発信してまいります。レポートについて、気になる点、詳しく知りたい点などがございましたら、下記お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。また、データ利用についてのお問い合わせもお待ちしております。

お問い合わせ – JAST Lab