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お知らせ

レポート

同一成分の医薬品を複数医療機関から処方された患者(重複服薬者)の傾向について

当社(日本システム技術株式会社 以下、JAST)では、独自に保有している匿名化済の診療報酬明細書(以下、レセプト)データを中心とした医療関連データを基に、調査を行った結果について紹介します。

重複服薬は医薬品の過剰処方による患者さんへの健康や医療費負担への悪影響の観点から問題視されています。
当社でもこの問題に対し、適正受診・適正服薬に向けた通知や勧奨事業を手掛けており、今回は重複服薬に焦点を当てレセプトデータを用いた患者傾向の調査を実施しました。

・重複服薬:1人の患者さんが複数の医療機関で診断を受け、同じ効果を持つ医薬品がそれぞれの医療機関から処方されること。

                 

【集計条件】
・調査対象:JASTが保有するレセプトデータ(約900万人)の内、2022年4月~2023年3月の1年間のデータ。同月に3施設以上の医療機関から同一成分の処方を受けた患者を調査対象とした。

     

 目次
 1 | 重複服薬者の発生割合診療年月別
 2 | 外来受診月数別の傾向 

 3 | 重複服薬の発生頻度別傾向                                         

 1 | 重複服薬者の発生割合


年代別に重複服薬者の発生割合を確認しました。

割合としては0歳代が比較的高い傾向を見せ、以降は10歳~40歳代まで増加傾向を見せましたが、40歳以降に関しては横ばいの傾向となりました。(図1)
加齢等により定期的な服薬が必要となった場合、年代に関わらず一定のリスクがあり、若年層においても注意が必要となる可能性が考えられます。

【図1】年代別重複服薬者の発生割合

※外来の受診者に限定して分析

 2 | 外来受診月数別の傾向


重複服薬の発生に関しては服薬の頻度が影響すると考え、外来の受診月数と重複服薬の傾向について確認を行いました。
重複服薬が確認された患者さんにおいては毎月通院されている方の比率が高く、50%以上の患者さんにおいて12か月の通院が確認されました。(図2)
また、重複服薬は複数の医療機関を受診していることが前提となるため、医療費においても受診施設が増えるほど医療費が上乗せされることとなり、重複服薬が発生していない患者さんと比較すると、外来の受診月数に関わらず大きな差があることがわかりました。(図3)
外来受診月数別に重複服薬の発生月数を比較したところ、毎月受診されている方においては平均5か月以上の発生が確認されました。(図4)
毎月の通院を必要とされる患者さんにおいて、重複服薬が発生した場合に重複服薬が継続してしまうリスクが高い可能性が考えられます。

【図2】外来受診月数別の患者構成比比較

【図3】外来受診月数別の患者1人当たり医療費の比較

※高額レセプト(1レセプト当たり50万円以上)は計算から除外

【図4】外来受診月数別の重複服薬発生月数

 3 | 重複服薬の発生頻度別傾向


重複服薬者を発生頻度で2分割して傾向を確認しました。(発生月数3カ月以内:低頻度者、発生月数4ヵ月以上:高頻度者)

診療月別に見た場合、低頻度者においては12月と3月にスパイクの発生が確認されました。(図5)
12月は風邪・インフルエンザ等の流行による受診機会の増加、3月は花粉症に伴うアレルギー関連での受診といった、季節性が影響する偶発的な発生が考えられます。
また、レセプトに記載されている疾病別での患者数においては「J30 血管運動性鼻炎及びアレルギー性鼻炎<鼻アレルギー>」の患者割合が一番多く、上記仮説を裏付けるものと考えられます。(図7)

高頻度者においては全体的に高水準での発生が確認されました。(図6)
重複服薬が常態化している可能性が考えられ、増減は各月の日数の影響によるものと考えられます。
レセプトに記載されている疾病別での患者数を確認したところ、「G47 睡眠障害」の患者比率が飛び抜けて高く90%以上の患者さんにおいて記載が確認されました。(図8)
高頻度者においては重複服薬の常態化が考えれることからお薬のオーバードーズや依存、ドクターショッピングといった懸念があり心配されます。

【図5】低頻度者における診療年月別の重複服薬発生割合

【図6】高頻度者における診療年月別の重複服薬発生割合

【図7】重複服薬低頻度者における疾病傾向(上位5疾病)

【図8】重複服薬高頻度者における疾病傾向(上位5疾病)

ここまで重複服薬者に焦点を当てて傾向を分析してきました。
重複服薬においては常態化してしまっている患者さんや偶発的に発生している患者さんがいる可能性が考えられます。
適正服薬を促すためにも、偶発的な発生に関しては12月、3月といったスパイクの発生を見越して、日常から服薬をされている患者さんをターゲットとした幅広い啓蒙活動が有効かもしれません。
また、重複服薬が常態化している患者さんについては患者さん本人をターゲットとした対策・指導が必要となることが考えられます。患者さんへの啓蒙活動においてはかかりつけ医、かかりつけ薬剤師との連携やお薬手帳の積極活用が重要となります。
この他、国主導で進められている電子処方箋の普及による処方データの管理強化による服薬の改善も期待されています。

国においても医療費適正化計画に医薬品の適正使用の推進が謳われるなど対策が急務となっており、JASTとしても医療に関わる事業者としてこの問題に積極的に携わっていきます。

JASTでは、データヘルス計画の策定支援や事業実施支援の一環として、特定健診の受診勧奨通知や重症化予防事業などのサービスも行っています。
他にも、約900万人分の匿名加工済みのレセプト・健診データ等の医療リアルワールドデータによる地域差分析やペイシェントジャーニーなどアドホックな分析やデータの販売を行っております。

気になる点、詳しく知りたい点などがございましたら、下記アドレスまでお気軽にお問い合わせください。

本件レポート内容に関するお問い合わせ先
 E-mail:rezult@jast.co.jp